東京大学の本郷キャンパス_イチョウ並木_イチョウの堆肥化成功_東大環境安全研究センター_堆肥のセシウム含有量は基準の四分の一以下_文京区内の小学校の落ち葉で作った堆肥から、国の基準値を超える放射性セシウムが検出

●東京新聞 2012年8月8日
イチョウ堆肥化成功 東大落ち葉減量作戦 偉業
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012080802000103.html
 東京大学の本郷キャンパス(東京都文京区)の正門の並木道は、晩秋から初冬にかけて黄色いイチョウで鮮やかに彩られる。同大のマークにもなっているイチョウだが、落ち葉の処理はたいへんな負担だ。そこで学内のごみ減量に取り組むプロジェクトチーム「東大けやきの会」は、難しいとされるイチョウの葉の堆肥化に挑戦し、今夏、成功にこぎ着けた。 (竹上順子)

イチョウ並木は毎年12月になると黄色く染まり、
路上を落ち葉で埋める=2009年12月、文京区本郷で(東大けやきの会提供)

 学内のごみ対策を担う環境安全研究センター協力研究員で、同会メンバーの横山道子さん(64)は「イチョウは東大の象徴。再資源化は私たちの悲願だった」と話す。正門から安田講堂へ続く約二百メートルのイチョウ並木をはじめ、本郷キャンパスには約三百本のイチョウがある。

 同キャンパスにはイチョウのほか、シイ、クスノキ、ケヤキなど約五千本の樹木が茂る。

 可燃ごみの二割は落ち葉で、毎年、百トン以上を約百二十万円かけて処理していた。これを減らそうと二〇一〇年十月、教員や学生、市民らがチームをつくり、堆肥化に取り組んできた。

 翌年、ケヤキの葉はふかふかの堆肥となったが、イチョウはだめだった。東京都港区の並木道がイチョウの名所である明治神宮外苑も「葉が厚く油分も多いイチョウは堆肥に向かない」(管理課)とその難しさを認める。

 堆肥にするには葉が腐敗しないように発酵させる必要がある。同会のアドバイザーで文京区立湯島小学校用務主事の小長谷(こながや)忠春さん(63)は、腐敗防止のために、イチョウを入れた網状の容器の下にブロックを置くなどして通気性を高めた。さらに、米ぬかを混ぜて発酵を促進。容器から出して葉をほぐし、再び戻す作業を繰り返し、今夏、イチョウ100%の堆肥百五十キログラムを完成させた。

 ここに至るには逆風もあった。福島第一原発事故の影響で、文京区内の小学校の落ち葉で作った堆肥から、国の基準値を超える放射性セシウムが検出されたため、区教委が区内の小中学校の落ち葉を利用した堆肥を使用禁止にしたからだ。

 幸いにも同会は、集めた落ち葉をビニールシートなどで覆っていたため、完成した堆肥のセシウム含有量は基準の四分の一以下だった。小長谷さんは一緒に作業した仲間を思い、「皆さんの協力のおかげ」と感謝する。

 同会は、九日午後四時半から新宿タカシマヤ(渋谷区千駄ケ谷5)の環境イベント「エコ100選」で成果を発表する。入場無料。

 三十日には東大竜岡門近くの堆肥場で午後二時から、一般参加者も交えて堆肥づくりの作業を行い、希望者にイチョウの堆肥を配る。問い合わせはファクスで、東大環境安全研究センター=03(5841)1232=へ。

福島第一原発事故と放射線の拡散がなかったら・・・