●WINEPのブログ 2012年10月30日
コナラ樹皮の放射能汚染
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福島県は有数のシイタケのほだ木の原木供給基地であるにもかかわらず、その原木であるクヌギやコナラが汚染して、県内ばかりでなく県外のシイタケ業者が国から出荷禁止処置を受けて窮地に陥っている。
おまけに北関東一円の森林が放射能汚染されているので、たとえ放射能汚染されていない原木が入手できても、森林内でのキノコの露地栽培では、林内のさまざまな生体に付着した放射性降下物の雨や土ほこりなどよる原木の二次汚染がおこり、それが直ちにセシウムの「移行係数」の高いシイタケ菌の汚染につながるので、シイタケ栽培業者はお手上げである。シイタケ菌はほぼ原木と同じ濃度までセシウムを濃縮する。
それにしても、コナラなどの樹皮の汚染がどんな具合なのかを、これまでだれも可視的に示した研究者がいないようなので、オートラジオグラフを撮ってみた。
コナラの樹皮のオートラジオグラフ
上のオートラジオグラフの原図(上下鏡面対称に見てください)
表面に細かく分布する白い鉄菱状のキノコは分類同定できていません。
これは飯舘村で車を転がしていると、人っ子1人いない山中で、道ばたに異様な小さな鉄菱状のキノコがつぶつぶに生えている伐採あとのコナラと見られる古木があったので、その木の皮を、はぎ取って持ち帰って、オートラジオグラフに取ったモノである。サーベイメーターを近接して最高0.22 µSv/hあった。放射能の絶対値(Bq/kg)はまだ調べていない。(後日測定して示すつもりだが、多分数千ベクレル/kgはあるだろう)
これで見るとコナラの樹皮の放射性降下物は大小の点々として検出されている。
以前に飯館村の臼石小学校で採取した松の樹皮をはぎとってその内側の面をオートラジオグラフに撮ったものをwinepブログで示したことがある。そのときは樹皮の内側には水孔を通ってきた放射能が点々と孔から漏れ出ているように見えた。残念ながら樹皮の外側の面はオートラジオグラフを取り損ねた。
(2011/09/17 : 校庭の松の樹皮の放射性セシウム汚染について)
今回はコナラである。東電福島第一原発暴発後約1年半がすでに経過している。コナラの樹皮に付いた放射性降下物で雨に溶けて洗われるモノは全部洗われてしまって、強く吸着した成分だけが、樹皮に残っているようにみえる。それにしてもテイリング(tailing)現象が見られないのが極めて不思議である。雨が降れば下方向にでも放射能が流れていく放射能汚染の軌跡が感光して残るはずであるが、それが全く見られない。
したがって、樹皮においては、吸着した放射性降下物の極少量しか可溶化しなかったものと思われる。樹皮に現在存在している放射性降下物は、ほとんどそのまま動かないのではないだろうか? ここでは示していないが、小生は漆の木の樹皮でも同じ斑点状の放射性降下物のオートラジオグラフの像を撮っている。
それでも、最近報道されているクリの実などのように、今年も果実が100Bq/kgを越えたモノがあるので、この樹皮にこびりついて水に不溶態の放射性降下物が、今後永久に溶けない、と断言するのはまだ危ない。
物理的に除染しなければ、いつまでも放射能が樹皮に留まることに変わりはないだろう。何年かすると、カビ、ナメクジ、アリ、ゲジゲジなどの小動物に食われたり、樹皮自身の寿命で剥離落下したりして、放射能の一部は土壌に固着するが、多くは生物による生態循環系の中に入っていくことになるだろう。
(森敏)